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リネン教科書

リネンとコットンの違いとは?それぞれの特徴や魅力を紹介します



天然素材の中でも人気の高いリネンとコットン。
どちらも優しい肌触りで、気持ちよく着られる素材です。

しかしリネンとコットンの違いについては、

意外に知らない人も多いのではないでしょうか。


そこで今回はリネンとコットンの違いについて解説します。


ぜひ最後までご覧くださいね。







1.リネンとは?生地や素材の特徴を紹介


まずはリネン生地の特徴を紹介しますね。

コシがあってしなやか、使い込むごとにやわらかくなるのがリネン生地です。
リネンは”麻”とも呼ばれています。

麻の仲間にはラミーやヘンプという他の種類もあるんですが、
今日はリネンに的を絞ってお話しますね。

今回、ぜひ知ってもらいたいリネンの特徴は、次の4つです。

■ 通気性・保温性に優れている
■ 使うほどに肌触りが変化する
■ 汚れにくい
■ しわになりやすい

それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう!




■ 通気性・保温性に優れている


リネンは通気性や保温性に優れています。

その理由は
リネンの繊維の中身が空洞になっていて、
空気を多く含むから。

実はこの“空気”こそ、
通気性や保温性をよくするための重要なポイントなのです。

繊維内の空気が、
体から放出される余分な熱を逃がすことで、
通気性がよくなります。

リネンは通気性が高く、
吸水性も高い(なんとコットンの4倍)ため、
汗をかく夏に最適な素材なのです。

「通気性がいいのに、保温性が優れているってどういうこと?」
と思う人もきっといらっしゃることでしょう。

矛盾点を解消するポイントは、
繊維内のストローのような空洞。

この空洞の中にある空気が体温によって温められ、
保温性が高まる仕組みになっています。

つまりリネンは余分な水分を逃がし、
温かい空気を逃さない!ということ。

暑い季節は涼しく、寒い季節は暖かく。
リネンは四季を通じて使える素材なんですよ。


■ 使うほどに肌触りが変化する


リネンは洗濯を繰り返すたびに、
肌触りが変化していきます。

おろしたばかりのリネンはなめらかな質感で、
ほんのりと光沢があります。

使うほどに、スルスルとしたソフトな肌触りを味わえるようになっていきます。


リネンはしなやかな素材ですが、
生地にコシもあるため、
最初はゴワゴワしたように感じるかもしれません。

リネンは植物の茎の繊維からできています。
中には固いものが混じってしまうこともあります。

しかしリネンの固さは、
洗濯をしていくうちにだんだん柔らかくなっていくものです。

この柔らかい肌触りの変化が、リネン人気の大きな理由ですね。

経年変化は、まるでリネンが育っていくような感じで
長く使うほどに、愛着がわいていきます。


■ 汚れにくい


リネンは汚れにくい素材です。

汚れにくいのは、
リネンの繊維に「ペクチン」と呼ばれる化学物質があるおかげ。

ペクチンはリンゴやかんきつ系の皮にも含まれている成分の一種で、
植物の細胞をつなぎ合わせるセメントの役目をしています。

実はこのペクチンのおかげで、
汚れが繊維の内部まで染み込みにくくなるんですよ。

また生地についた汚れが、落ちやすくなるという効果も。

さらにペクチンは静電気も抑えてくれるので、
ほこりがつきにくいというメリットもあります。

菌も繁殖しにくいので、
リネンは清潔を保ちやすい素材なのです。


■ しわになりやすい


リネンは他の素材と比較して、しわがつきやすい素材です。
なぜなら化繊やウールなどと違って、
リネンは繊維の弾性が乏しいからです。

リネンを洗濯したあとで脱水にかけた状態を見てみましょう。


このままだと固そうなしわがついたままになりそうですよね……。
これを放置するとパンパンとたたいてから干しても、
頑固なしわは残ったままで、簡単には取れません。
つまり、リネンは元の状態に戻ろうとする力が弱いということなんです。

しわが深くたくさんつくのはちょっと…とお思いの方、
大丈夫です。
しわをできるだけつけないようにするための、
ちょっとしたコツがあるんです!

洗濯後の脱水時間を
20〜30秒程度にしてみてください。
設定できない場合は1分でOKです。

おそらく水が滴り落ちる状態になるでしょう。
そのまま陰干しをすれば、
水の重みでしわが伸びやすくなります。

リネンはびっくりするくらい乾きやすい素材なので、
そのまま干しても夏場ならすぐに乾いてしまうので問題なし。

どうしてもしわが取れない場合は、
市販のしわ取りスプレーを使うのも一つの手ですよ。





2.リネンとコットンの違いとは?


ここからは、リネンとコットンの違いについて紹介します。

■ 原料の違い
■ 肌触りの違い
■ 速乾性の違い
■ 縮み率の違い

知っているようで知らない二つの素材の違い。細かく見てみましょう!




■ 原料の違い


リネンとコットンは原料が違います。

リネンは、茎の繊維から作られます。

その中でも柔らかい部分を使い、
リネンの糸をつくっていくのです。

2019年現在の調査では、リネンはフランスやベルギー、
ベラルーシやロシアが多く生産しています。


コットンは『ワタ』という名前の植物から取れる
種をまもるためについた写真のような毛が原料です。

写真のような状態が『綿花』と呼ばれるのは、
この毛が白い花のように見えるから。

綿花を糸にして、コットンの糸は出来上がります。
その後、糸が生地になるんですね。

コットンはインドや中国、アメリカやパキスタンが多く生産しています。




■ 肌触りの違い


リネンとコットンでは感触も異なります。

最初のリネンは少しゴワゴワとしていますが、
洗濯をするほどにしなやかになっていきます。

なので、リネンは強度のある素材だとわかります。
そのやわらかさが分かるのは、しばらく使いこんでから、
ということになりますね。

長年使い込んだリネンの洋服は、
見た目に味わいが出て、
落ち感を楽しめるようになります。

もまれるほどに、深みを増していく……。
まるで人生のようですよね。


一方コットンは繊維が丸くなっているため、柔らかく手触りも優しく、
肌が弱い人や赤ちゃんでも安心して使える素材です。

ナチュラルな風合いと肌触りで、
直接肌に触れる下着やTシャツ等に向いています。




■ 速乾性の違い


リネンとコットンでは速乾性も違います。

リネンはさきほどお伝えしたとおり、
非常に通気性の高い素材です。
繊維の中が空洞になっているため、乾くのも早いのです。
リネンが服だけでなく
キッチンファブリックにも使われるのは、
そういったメリットがあるから。

速乾性の高いリネンはすぐに乾き雑菌がわきにくいため、
清潔な状態を保ちやすくなります。

ではコットンの速乾性はどうなのでしょうか?

結論から言うとコットンは、リネンほど速乾性が高くありません。
水を吸収したあと、蒸発させるのに時間がかかる素材なのです。
コットンは乾きがよくないため、
山登りでの下着には向かないと言われています。

なぜなら汗をかいても蒸発しにくく、
衣服の中に水分がこもり、体が冷えてしまうからです。

こまめに着替えられるのであれば、汗をかきやすい時期の服装は、
肌触りを重視したコットン生地がよいでしょう。

一方、長い時間着続けなければならない場面では、
乾きの早いリネンがオススメです。




■ 縮み率の違い


リネンとコットンは縮み率が異なります。

縮み率とは、生地を水洗いしたときに起こる縮む割合のことです。

天然素材である以上、水洗いでの縮みはどうしても避けられません。

素材や折り方、糸のより方によっても変わりますが、
リネンの縮み率はおよそ5〜10%です。
対してコットンの縮み率はおよそ3〜5%です。

洗濯するうちに縮みは徐々に減っていきますが、
できるだけ生地を縮ませたくない場合は、
以下のことに気をつけてみてください。

■ 洗濯での水温を30度以下にする
■ 乾燥機を使わない
■ 洗濯表示に従う

特にリネンは大幅に縮む恐れがありますので、
リネンの服を買う場合はどの程度縮むかを
紹介しているお店で購入するのがオススメです。





3.リネンとコットンの違いを知って、暮らしに合う素材を選ぼう



リネンとコットンの違いについて紹介しました。

どちらも植物から生まれた素材ですが、
原料から質感、素材の特徴までさまざまな違いがあるんですね。

速乾で汚れにくく、生地の育っていく様子が楽しみなリネン、
やわらかさやふんわりした風合いが心地よいコットン、
違いを知って、暮らしにとりいれてみるのはいかがでしょうか?



今回はリネンとコットンの比較のお話でしたが、
リネンに興味がわいてきた、という方もいらっしゃるかもしれません。

ここからはリネンびいきになりますが失礼いたします。
ちょっとリネンを使ってみたくなったけど、何からはじめたらいいか分からない…
やっぱりあまり使い慣れていない素材を使うのには不安がありますよね。。

そんな不安がありましたら、リネン専門店に質問してみるのが一番です。

どんなリネンアイテムから使ってみるのがいいのか、
リネンの厚み、特性、使い勝手などなど。

…知りはじめると止まらないリネンの世界…奥深いです。

wafuのスタッフも、
リネンのことをお伝えするのをいつも楽しみにしているので、
ご質問は大歓迎です!お気軽にWEBショップからお問い合わせください。

リネンは夏の素材と思われがちですが、
いろいろなリネンがあるので厚みを変えて
春夏秋冬、
一年を通して使える万能な生地なのです。

リネンは老若男女、
どなたでも快適に着られる素材。
だからwafuはリネンが好きなんです。

こんな快適な素材を知らないなんて人生の時間がもったいない…!
そんなリネンの良さをもっと知っていただけたら…と願っています。







また、LINEでもリネンアイテムに関する情報を発信中です。

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冬リネン特集














リネンと言えば、夏の服…
いえいえ、重ね着の名わき役として体温調節に大活躍のリネンは、
冬にこそ役立てていただきたい素材なんです!
なぜ、そう言えるのか、どう、活用するのか、
早速ご案内いたしますね。





1.冬にもおすすめ リネンインナーコレクション

まずさっそく、リネンインナーとはどんなものか、ご紹介いたしましょう。


▲薄地 雅亜麻 リネン ペチパンツ p003a


部屋着としても大活躍のペチパンツ。


▲薄地 雅亜麻 リネン フリル 襟 ペチワンピース p009a-wht1



▲薄地 雅亜麻 リネン ピンタック ペチワンピース p001a-hbm1


ネックラインにポイントがあり、重ね着で見せても素敵なペチワンピ。


▲薄地 雅亜麻 リネン インナー ヘンリーネック タンク p011a-bck1


ボタン付きの上身頃と長めの丸裾で、タンクトップとしても使えるインナートップス。

シンプルで使い勝手の良いインナーをご用意しております。




2.なぜ、冬にリネンインナーなのか


それは、リネンが吸水性とその水分の発散性にすぐれた素材だからです。

冬場でも暖房のかかった部屋では、特に重ね着で汗をかきますよね。

リネンならその汗をよく吸い、空気中に水分を放出するので、
ムレが少ないという効果が期待できます。

服の中が、湿気が多くむしむしする状態、回避できたら快適ですよね。

さらには保温効果もあります。しかもこれは温度を適切に保ってくれる保温です。

リネンは、暑くなったら熱を逃がし、寒くなったらためた空気で保温してくれるという、
人の肌の活動を手助けしてくれる素材なんです。




3.インナーリネンの冬コーディネート



▲中厚 リネン アワーグラス ドレス a074a-red2


フリル襟ペチワンピースを赤のワンピースの下に重ねて、
顔回りの雰囲気を明るくやわらかくしています。
この上にリネンやウールコートなどを羽織ればもっとあたたか!


▲中厚 リネン100% リネンパーカー t047a-asa2


こちらはフード付きトップス。 インナーは薄手リネンの襟付き前開きタンクトップ。
腕のもたつきもなく、肌を快適に保ってくれます。
コーディネートの差し色としても大活躍。
さらにインナーのタンクトップは夏に1枚で着ても快適!ベストにもできて使い勝手抜群です。
インナータンクトップは >>こちら<<


▲中厚リネン ハイウエスト風ギャザースカート s005a-azk2


トップスの下からさりげなく見えるのもリネンインナー。

ブラックとブラウンの暗めなコーデですが、 襟元とスニーカーの白がポイントになって暗すぎず着ることができますね。




リネンのレイヤードを工夫すれば、
暖房での冬の汗を吸収・逃がし、いつでもさらりと快適。
肌の働きを促進しながら保温もしてくれるので、インナーにぴったりですね。
ぜひリネンの快適さ、一度お試しくださいませ。


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文・笠原里紗 写真・岡田玲子

 『眠れる森の美女』とリネンの関係


ヒロインの行動力が男性を上回ったり、
ヒロインの強さや聡明さが男性を変えていくといった、
次世代の女性像を体現したヒロインにも
注目が集まる近年のディズニープリンセス。

そこには女性の生き方が時代によって
大きく変わってきたことが見て取れます。

ヒロインを知ることは、歴史を知ることです。

たくさんの素敵な作品がありますが、
今回は『眠れる森の美女』に注目させてください!

この物語、実はリネンと関係あるって知っていました?
そこには描かれた時代背景の影響がありました。






1.『眠れる森の美女』のキーアイテムは糸車?


輝く金髪、バラのように赤いくちびるを持つ美しい
ディズニープリンセス・オーロラ姫といえば、ご存知『眠れる森の美女』ですよね。

この作品は悪役ながら荘厳さと魅力のあるキャラクターを軸に
『マレフィセント』という魔女視点の実写作品も公開されていたので、
知名度が高い作品だと思います。

実はこの物語の重要シーンのひとつに、
リネンが関係しているって知っていましたか?


ではちょっとあらすじを。

ヨーロッパのとある国に待望のお姫様が生まれました。その名はオーロラ。(ここからちょっと早送り……)どこからともなく、悪い魔女であるマレフィセントが現れます。そしてオーロラに「16歳の誕生日の日没までに糸車で指を刺して死ぬ」という恐ろしい呪いをかけて去っていきます。
恐ろしい魔女に呪いをかけられてしまったことから、オーロラの父ステファン王は呪いが実行されないように、国中の糸車を集め焼いてしまいます。しかし、呪いの通り糸車の針に指をさしてしまったオーロラ姫は、とうとう永遠の眠りについてしまったのでした……。
ここから先はもちろんハッピーエンドへの展開がちゃんとあるのですが、割愛します。

なんども出てきましたよね、「糸車」。そう、
この物語の重要なアイテムは糸車なんです。

糸車は、リネンの原料である糸を植物の亜麻から紡ぐための
大事なアイテムです。




2.原作「いばら姫」にも亜麻が登場?


『眠れる森の美女』は「いばら姫」というお話をモチーフにつくれています。

「いばら姫」はヨーロッパの古い民話として伝えられ、多くの人が童話に取りあげているほか、さまざまな類話も存在します。

日本では、19世紀にドイツのグリム兄弟が編纂した『グリム童話』の内容がもっとも有名ですよね。

グリム童話では、「王女が15歳になったら、紡ぎ車の針が指に刺さって死ぬ」という内容になっています。

グリム童話よりさらに昔、17世紀に活躍したフランスの詩人、シャルル・ペローの童話集にも「いばら姫」は収録されています。

そして「いばら姫」の原作はさらにその昔、イタリアの詩人ジャンバティスタ・バジーレがまとめた説話集『ペンタメローネ』だといわれています。そのなかの一遍、「太陽と月とターリア」というお話です。


あらすじはというと……
ある国にターリアという王女が生まれ、その誕生を祝うパーティが開かれていました。パーティーに出席していた預言者が、「亜麻によってターリアに災いが起きる」と予言をします。

王様は亜麻や大麻を屋敷の中においてはならないと命じていたのですが、大きくなったターリアはあるとき、糸を紡ぎながら歩いてくるおばあさんを見つけます。興味を持ったターリアはおばあさんに糸巻き棒を借りて亜麻からリネンの糸を紡ぎ始めると、リネンの糸に混じっていたトゲが爪の下に刺さり、予言通りに倒れてしまうんです。

亜麻とリネンというものが当時の人たちにとっては
物語のカギになるほど重要であったことがよくわかります。




3.王女であっても糸紡ぎの技術が必要だった?



でも王女が糸を紡ぐというのは、ちょっと違和感がありますよね。

いやいや、そんなことないんです。

実際、フランク王国(今のフランスあたりの位置)のシャルル王は「王女を含めたすべての女性は、糸紡ぎと機織りの技術を習得せよ」というおふれを出していたのだそうです。

亜麻の糸紡ぎは、身分の高い低いに関係なく、すべての女性の大切な努めだったんですね。


糸紡ぎなどの手仕事は、歴史をみても長きに渡って実際に女性の日常労働の一部、あるいはかなりの部分を占める重要な要素だったと思います。

ヨーロッパでは近世まで、女性の美徳を象徴する手仕事として、糸紡ぎが繰り返し説かれ推奨されていました。

さらに古くヨーロッパ文化の起源を遡ってみてみると、ギリシャ神話の時代から糸紡ぎと機織りは女性の手仕事の典型とみなされています。

今となってはそんなの信じられませんよね。


ときにはふいに短く途切れ、ときには思いのほか長く撚りあげられるリネンの紡ぎ糸。そこに自分の人生を重ね合わせる女性も当時は多かったのではないでしょうか。

そして王女が亜麻によって倒れるという話の創作のもとになったのは、もしかしたら女性たちの労働に対する危惧などが込められていたのかもしれません。




4.今回のまとめ

  • ・『眠れる森の美女』にはリネンの糸を紡ぐ糸車がキーアイテムだった
  • ・『眠れる森の美女』の最古の原作は、リネンの原料亜麻のトゲで王女が眠りにつく
  • ・フランク王国では王女を含めたすべての女性が糸紡ぎができなくてはいけなかった


文・綿貫大介 写真・Pixabay Photolibrary

『嫁入り道具』としてのリネンの風習


日本は昔から、女性が結婚する際に着物を詰めた大きな桐ダンスなどの家財道具を「嫁入り道具」として用意する習慣がありました。

今は住宅事情やライフスタイルの変化もあり、「嫁入り道具」なんていう言葉自体がもう死語かもしれませんね。

でも実は昔のヨーロッパでは「リネン」を「嫁入り道具」として持たせる風習があったんです。

今回はそんなリネンの風習に関するお話です。





1.嫁入り道具の風習は世界各国にある?


結婚はたくさんの人に祝ってもらえるお祝い行事です。ただ「嫁入り」という言葉がある通り、多くの場合「女性の結婚=男性側の家に嫁として入ること」になります。つまり結婚は昔から女性が自分の家族と離れて、人の家の人間になるということを意味していました。

日本においても、明治〜昭和時代を描いた朝ドラなんかを見ると昔はなかなか結婚して嫁ぐ女性の里帰りが許されていなかったりしますよね。


結婚とは女性にとってそういうものだったのです。戦後、家制度は廃止されたと言われますが、新型コロナウイルスの緊急経済対策として実施する全国民向けの一律10万円給付が「世帯主」への一括給付であったり、夫婦別姓が認められていなかったりする現状をみると、まだまだ結婚においては家父長制の根深い問題があります…‥。


って、話がそれました!

とにかく結婚する女性の緊張と不安を和らげるためにも、嫁いでいく娘のはなむけとしても「嫁入り道具」は存在していました。この「嫁入り道具」の風習というのは、世界各国に存在します。




2.ブルジョア層からリネンを持たせる風習が広がった?


ヨーロッパでは、花嫁が結婚する時に自分と花婿のイニシャルを刺繍したハウスリネンを嫁入り道具として持っていく風習がありました。

もともとは19世紀の上流階級の間から広まったもので、令嬢の嫁入りの支度として、花嫁衣装はもちろん、嫁入り装具としてフリルのついた下着や産着、そしてカバーやシーツといったハウスリネン類一式も大量に持参させていました。
それはそれはあまりにも膨大な数で、相当の金額がかかっていたようです。


もちろん嫁ぐ女性が身の回りのものを整えることは古くから行われてきたことですが、19世紀半ば頃には、女性向け雑誌やエチケット本でも大きく取り上げられるようになっています。

娘が嫁入りする際に、権力と財力のある大貴族はお金に糸目をつけない豪奢な嫁入り道具を準備していたんです。




3.一生分のハウスリネンが嫁入り道具に?



世界初の百貨店といわれるパリの老舗デパート「ル・ボン・マルシェ」で20世紀のはじめにあった嫁入り道具のおすすめセット例は……

6ペアのシーツ、
24枚のピローケース、
36枚のテーブルナプキン、
3枚のテーブルクロス、
24枚のディッシュタオル、
12枚のハンドタオル、
24枚のバスタオル、
6枚のエプロン、
12人分の完璧なテーブルセッティングに
必要なカトラリーセット。
ですって。すごい量ですよね……これ全部持っていくんですか!

写真のようにwafuの日用雑貨をかき集めてその量に対していさわさんに驚いてもらいましたが、実はこれだけ集めても上記のセットにはまだ足りない!それだけ多くの嫁入り道具を持って行ったんですね。


たくさんの嫁入り道具を持たせることは、裕福さや家柄の良さを示す財力の証明でもあったと思います。でももちろん、一生分の「リネン」をセットで持たせるというのは、娘の一生を守り、末永い幸せを願っている親心でもあると思います。

今では一生分のリネンを持たせる習慣もほとんどなくなってしまったのですが、 イタリアの田舎や北欧、ポルトガル、トルコなどその習慣を残す地域がわずかにあります。

たとえば、女の子が生まれると、その子のタンスの引き出しに結婚するときに身につける下着を入るそうです。
そして毎年、誕生日を迎えるたびにタンスのなかに嫁入り道具としてリネン製品を増やし、揃えていくのだとか。

また結婚が決まると、リネンのベッドカバーに豪華な刺繍を施し、嫁入り道具のひとつとして嫁ぐ日のために準備するということもあるそうです。




4.アンティークリネンが人気なわけは?



「リネンは、大切にすれば100年持つ」と言われるほど丈夫なアイテム。

結婚のお祝いにおばあちゃまの代から受け継ぐリネンを持つことも多かったと聞きます。質の良いリネンに触れると、代々受け継いでも使いたい気持ちは十分に理解できます。

近年は日本でも、海外のアンティークアイテムを扱う蚤の市イベントが全国各地で行われていたりしますよね。

フランスなどの蚤の市で仕入れられたアンティーク雑貨のなかに、リネンのファブリックアイテムを見かけたことはないですか?
実は味わい深いアンティークリネンはとても人気があります。


使えば使うほど魅力を増すリネンのアイテム。

誰かの人生を支えてきたリネンアイテムを、その歴史を、受け継いでみるというのも趣があっていいですね。
そのアイテムは、かつて親が娘を祝福するために準備し、花嫁の人生を支えたリネンかもしれないんですから。




5.今回のまとめ

  • ・ヨーロッパでは嫁入り道具としてリネン類を贈る風習があった
  • ・19世紀の上流階級の令嬢は一生分のリネンを親からもらっていた
  • ・アンティークリネンとして今でも受け継がれているリネンが多くある


文・綿貫大介 写真・岡田さん Pixabay 出演・いさわさん

植物繊維からどうやってリネンができるの? リネン糸ができるまでの工程は?


毛羽立ちが少なく、しなやかな風合いのリネン糸。

前回、亜麻(フラックス)という植物がリネン糸の原材料だという話をしましたが、原料の生育はもちろん、その加工方法ひとつにしても、できあがる糸の品質に大きく影響を与えています。

今回は、リネン糸ができあがるまでの工程をフィーチャーしてお届けします!





1.まずは腐らせることが大事?


花の季節が終わり、葉が落ちはじめ茎が成熟したころに、亜麻(フラックス)は収穫されます。
亜麻(フラックス)の茎の部分が、にリネンで紡績される糸の原材料です。

畑で栽培された亜麻(フラックス)は、根本から刈り取るように収穫されると、約1か月ほど地面に寝かせ、太陽や雨風にさらします。
そして土壌のバクテリアなどの力を借りて熟成させていきます。これは、レッティングという作業工程のひとつ。

レッティングとは、茎の繊維周辺のたんぱく質を腐らせて、繊維以外の部分を取り除きやすくする作業のこと。
繊維を柔らかくほぐしてあげるためにはとても重要な工程です。このように自然の力でレッティングを行う方法を今でも用いている地方はたくさんあります。

自然の力って偉大ですよね。そしてこれ、とっても環境に優しい方法ですよね。


リネンの産地で有名なフランダース地方などではかつては川などに直接、亜麻(フラックス)を浸けて繊維を取り出す「ウォーターレッティング」が行われていました。

レイエ川は特に有名で、リネンの美しい色から「Golden river」とも呼ばれていたんだとか。でも、今は川の水質汚染の問題で禁止されています。

現代行われている、自然に腐らせる方法はたしかに合理的ですよね。「ウォーターレッティング」に対してこの自然の方法は「デューレッティング」と言われています。




2.叩いて梳かすことで高品質なリネンができる?


レッティングが済んで乾燥させた束は、スカッチングという工程に進みます。
束を叩くことで、繊維以外の茎の不要な部分を落としていく作業です。

スカッチングされた原料は、そのまま紡績されることもあります。
この場合、殻などもたくさんまだ残っている状態なので、とても太くて粗い糸ができあがります。これはこれで素朴で丈夫なリネンになるのですが、たいていは次の工程に進みます。

次はスカッチングによって叩かれた束から、芯や殻の硬い部分を取り除くハックリングという工程。
金属でできた硬い剣山のようなブラシに束を引っ掛けて梳かしていきます。

何度もハックリングを繰り返すことで、繊維はどんどんしなやかで柔らかく、光沢を生んでいくんです。これにより短く太い繊維は取り除かれ、長い繊維だけが残っていきます。




3.リネンには長い繊維と短い繊維がある?



実は亜麻(フラックス)の束の中には、繊維の長い部分と短い部分が混在しています。

長い繊維は、細い糸に紡績され、柔らかく繊細な仕上がりになるんです。

みなさんがイメージする肌触りのいい上質なリネン100%の製品はたいていこの長くしなやかな繊維が使われていて、これらは「一等亜麻」とも呼ばれています。


でも取り除かれた「二等亜麻」にあたる短い繊維も無駄にはなりません。

丈夫な太い糸に紡績されたり、繊維の長さが同じコットンとの混紡にまわされて、リネンコットンとして生まれ変わったりしています。

野性的でムラ感が強いということを麻も魅力として感じている方も多いので、こちらもとても需要があるんです。




4.リネンは濡らして紡績する?



こちらの動画はリネンの紡績の様子ですが、7分55秒あたりから見てください、糸からなにか滴り落ちています。男性が機会のふたを開けると水蒸気が。これは一体どういうことなのか。

レッティング、スカッチング、ハックリングの3つの工程はリネン紡績独特の重要な工程でした。ここまで加工できたら、あとは紡績工場へ運ばれてきれいに糸の形に仕上げていきます。

その後は、実は先ほどの動画でご覧いただいた通り、リネンは紡績方法も特殊で、できあがった繊維を引き伸ばしたり撚ったりした祖糸を精紡する工程で『水』を使うんです。だから、糸から水滴がおちていたのですね。

ウールやコットンはわざわざ水に浸すことなく紡績できるんですが、リネンは祖糸を水でびしょびしょに濡らしながら紡績します。

これはウエットスピニングといいます。

亜麻(フラックス)にはペクチンという糊のような成分が含まれていて、水に濡れるとふやけて柔らかくなり、乾燥すると硬くなる性質があるんです。

つまり、ペクチンを溶かすことで糸の強度やハリ、コシの強さを出せるし、毛羽立ちを抑えられる! これ、リネンをつくる上でとても理にかなった紡績方法なんです。


リネン糸一本ができるまでに、こんなに計算され尽くした工程がたくさんあるなんて……。
ちゃんと素材の特徴を生かした方法を行っているからこそ、品質の良い糸ができあがるんですね。納得!




5.今回のまとめ

  • ・収穫したリネンは一度腐らせて熟成させる
  • ・叩いて梳かすと長くしなやかな繊維ができる
  • ・短い繊維も太くて丈夫なリネン糸に生まれ変わる
  • ・レッティング、スカッチング、ハックリングの3工程が重要
  • ・ウエットスピニングで毛羽立ちのないリネン糸ができる


文・綿貫大介 写真・Pixabay wikipedia 笠原里紗

リネン生地は縫う前が大事!なぜなら「地の目」があるからだ!


wafuの代表綿貫と職人の会長綿貫が、
全面的にダメ出し・一時販売中止をしたリネンハンカチ。
その理由を知っていますか?

こんにちは!wafuスタジオ案内人、笠原です。

今日は普段皆さんが服として身に着けている
wafuのリネン服の生地の目(地の目)についてお伝えしますね。

普段生地の目をじっくり見たことって、なかなかないですよね。
これがじっくり見ると味わい深いし面白い!その世界を一緒に旅しましょう!


リネンって実はまっすぐ縫うのも難しいんです。その理由も今回の内容と関係します。だから、リネンの服でピンタックとかフリルとか、凝ったデザインで美しいものってなかなかないんです。

リネンの繊維は1本1本が不均一で、それで織られているリネン生地は形状が変化しやすく縫子を苦しめます…。その格闘の末に、卓越した技術を身に着けるのでありますが、繊維が1本1本そろっていないということは、この繊維の縦糸と横糸で織ってあるリネン生地は、仕入れた状態だと特にその目(地の目)がそろっていないのです。


実際に見ないと『目がそろっていない』って、なかなかイメージがわかないですよね。いつも目をそろえた状態の服をお渡ししているわけですから。

それじゃ、何もしていない地の目がどんな様子か、じっくり見てみましょう~。



この縦糸のみが毛のように残っている部分、写真の手前から奥にかけて長さが長くなっていますね。



①と②が平行になっていないことが分かります。
この分だけ、目が曲がっているんです。
もともとこの間に横糸が織られていたわけですから。

リネンの地の目ってこんなにそろっていないもんなんですか…
私もwafuに来るまで全く知りませんでした…。

この目がよれたまま、例えばハンカチを作ると…どうなるかお分かりですね。
ヨレヨレのハンカチができてしまうのです!

まあ私みたいなズボラはハンカチがよれていてもあんまり気にしないのですが、
職人気質の代表と会長はもう許せないらしいです。笑

畳んだときに四隅がきちっとそろうよれていないハンカチ!これを目指しているそうです。



うん、四隅がきちっとそろうハンカチ、確かに美しい。

そんなわけで、どうやってこの地の目をそろえるか、一緒に見てみましょう!もちろんこれはハンカチだけでなく、wafuのリネン服・雑貨においてすべて行われている工程なんです。



この生地のカーブを見てくださいよ!生地を何もしないと、横糸ってこんなに曲がってるんです。



曲がっている部分ほぐして、横糸を抜いていきます。



抜きあがったらほぐれた縦糸をハサミでじょっきん。
これでようやく地の目がまっすぐになるわけです。

こういった手間は身近に作業をする人がいないと知る機会もないですよねー。
私もwafuに務めてなかったら、きっとわからなかったですもの。

でも、服を作る人たちが身近にいる環境で、こういった工程を知ることができて本当に面白いって思います。普段使う服や雑貨への愛着や感謝が増しますね。

生地から何かを作るって、本当にすごい。そんなわけで、今回はリネン生地の目のそろえかたをお伝えしましたー。現場からは以上です(シャチョーのパクリ)。




文・笠原里紗 写真・綿貫シャチョー / 笠原里紗


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世界のリネンの歴史を知りたい!-日本編-


wafuのお宿、日本家屋にリネンののれんをかけていますが、
今では日本でも麻といえばリネンをイメージすることが多いと思います。

では、いつから素材としてのリネンは日本に根づいたと思いますか?
そういえば日本でリネンの原料となる亜麻(フラックス)を栽培しているイメージってあまりないような……。日本でリネンの原料の栽培はできるの?など、今回は、リネンの日本における歴史を掘り上げてお届けします。

※亜麻(フラックス)とはリネンの原材料となる植物です。





1.薬用の植物から大麻に変わる繊維植物へ?


リネンの原料となる亜麻(フラックス)は、写真のような植物です。小さめの花がかわいいですよね。これが日本にもたらされたのは、元禄時代と言われています。でも当時は薬草園で薬用として試作されていて、繊維としては注目されていなかったようです。

転機は幕末。繊維作物として輸入され、北海道のガルトネル農園で栽培がはじまりました。

ガルトネル農場といえば、日本の西洋農業発祥の地と言われるところ。プロシア(ドイツ)商人のガルトネルが、北海道の七飯町に農場を開き、日本にはなかった農機具を使い、小麦などの穀物やりんごなどの果樹などを持ち込んでプロシア流の農業に取り組んでいました。

そこで亜麻(フラックス)もつくっていたんですね。

亜麻(フラックス)は寒冷地が栽培場所に向いており、実際に世界の栽培地を見てみると札幌市よりも高緯度地方になっています。

日本で麻といえば昔はリネンではなく大麻のことだったというのは以前お話しました。それまで繊維作物として栽培されていた大麻に亜麻(フラックス)は匹敵する作物なのか、それよりも優れているのか、徐々に関心が強まっていきます。




2.お抱え外国人の鶴の一声で亜麻(フラックス)栽培は本格化?


リネンの原料、植物のフラックスは乾燥すると写真中央のような茶色の束になります。この経緯はまた以降に説明するとしまして、話を日本のリネンの歴史に戻しますね。

1871(明治4)年、北海道開拓使のお抱え外国人だったトーマス・アンチセルが日本における亜麻(フラックス)生産の提案者といわれています。

七重開墾場(ガルトネル農場を日本政府が引き取ってこういう名前になった)視察の際に亜麻(フラックス)が見事に生育しているのを見て、日常生活に必要な作物の栽培はもちろん、貿易できる作物の栽培が急務だと亜麻(フラックス)栽培を助言しました。

それを受け、亜麻(フラックス)から繊維をとる技術の導入がはじまります。

1876年(明治9年)からは一般農家にも亜麻(フラックス)の種子を配布し、農家での試作も行われていきました。その結果、亜麻(フラックス)は北海道の気候風土に合う作物であることが立証されたんです。糸や布製品をつくることで、北海道に新しい産業を起こすことができるようになります。

そして1887(明治20)年、「北海道製麻株式会社」が設立されます。全国から募集した工員は400人。相当の力の入れようです。

道内初の雁木工場、琴似亜麻(フラックス)工場をはじめとして、道内各地に亜麻(フラックス)から繊維をとる製線工場(亜麻(フラックス)工場)が建設されていき、右肩上がりで亜麻(フラックス)産業が成長していきました。

この頃、国内需要への対応もちろん、海外にもリネンを輸出していたんです。




3.戦争需要で亜麻(フラックス)栽培は急増?



明治開拓の時代から第二次世界大戦まで、北海道の主要作物として全道各地に亜麻(フラックス)畑の姿を見ることができました。

明治時代に北海道で亜麻(フラックス)生産が始まってから、日本は大きな戦争を何度も繰り返してきましたよね。

亜麻(フラックス)の繊維をもとにつくられる布は、丈夫で長持ちします。衣類や蚊帳、漁網など幅広い用途に使われましたが、丈夫な性質から、軍用品としての需要が特に高かったんです。リネンで軍服やテントなどをつくるのに亜麻(フラックス)は重宝されました。

その結果、北海道では日清戦争の頃にはもう大麻よりも亜麻(フラックス)の作付面積のほうが大きくなっていました。亜麻(フラックス)の栽培面積は、1945(昭和20)年に 道内で4万ヘクタールにも達して、それはジャガイモの栽培面積にも匹敵する規模でした。

道内の工場は最盛期は85か所にもなったんです。

しかし、1945(昭和20)年に戦争に破れた日本は、平和な国づくりを進めることになります。戦後は食糧不足のため、国は農作物を育てることを優先するようになりました。そのため、亜麻(フラックス)栽培をする農家は減っていき、工場は原料となる亜麻(フラックス)の茎を確保することが難しくなっていきます。

さらに石油などを原料とした化学繊維が急速に広まることで亜麻(フラックス)の需要が減り、工場はどんどん閉鎖され、1963(昭和43)年には最後の工場が閉鎖されます。

亜麻(フラックス)の栽培はいったんここで途絶えることとなります。亜麻(フラックス)は日本から姿を消してしまいました……。




4.亜麻(フラックス)は再び北海道で栽培されている?



今、北海道の畑の風景で思い出すのは、じゃがいも畑だったり、ラベンダー畑だったりで、亜麻(フラックス)を想像する人はほとんどいないと思います。

かつて一面の亜麻(フラックス)畑があった北海道。世界情勢や産業の推移で、その風景はかんたんに変わっていってしまうんです。

それでも、亜麻(フラックス)生産を由来とする地名が道内にはいくつか残っています。その代表例が、札幌市の麻生(あさぶ)。この地は、この場所に亜麻(フラックス)工場が存在した歴史を地名に残そうと「麻生町」という地名になりました。工場の跡地にはたくさんの家が建ち、住む人々が増えて発展していきました。

そして近年、道内では亜麻(フラックス)を復興する取り組みがさかんに行われています。有名なのは、石狩郡当別町。ほかにも2004(平成16)年に札幌市に亜麻(フラックス)公社が設立され、複数地域の農家に栽培委託されています。

最近は健康ブームで亜麻(フラックス)仁油も話題になっていたり、亜麻(フラックス)の魅力は再認識されだしています。

かつて多くの道民に愛された亜麻(フラックス)畑。
当別町では亜麻(フラックス)の花が見ごろを迎える時期(6月下旬~7月上旬)に合わせて「北海道亜麻(フラックス)まつり」が開催されています。

リネンの原料となる亜麻(フラックス)がかれんに咲く姿、実際に一度見てみたいものです。




5.今回のまとめ

  • ・北海道のガルトネル農園で亜麻(フラックス)を栽培していた
  • ・明治初期から日本でも繊維作物として亜麻(フラックス)を本格栽培
  • ・亜麻(フラックス)栽培は軍需で急成長
  • ・戦後に亜麻(フラックス)栽培は途絶える
  • ・今は再び北海道で亜麻(フラックス)の栽培をしている


文・綿貫大介 写真・Pixabay


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世界のリネンの歴史を知りたい! -中世ヨーロッパ編-


リネンといえばヨーロッパ。そんなイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。アイリッシュリネン、フレンチリネンなど、ヨーロッパ生まれのリネンは今でも品質の良さに定評があり人気です。

では、ヨーロッパでリネンはどう定着していったのでしょうか。
今回はヨーロッパリネンのお話です。





1.リネンをヨーロッパに伝えたのは海に生きた商人?


古代エジプトで芽生えたリネン文化(エジプト編へのリンクつける)はヨーロッパへと広がり、それからしっかりと根づいていきました。

ヨーロッパ伝統社会にその長い歴史を築き上げてきたリネン。今でもヨーロッパはリネンの一大産地です。

エジプトからヨーロッパへとリネンを伝えたキーマンが、フェニキア人です。聞いたことありますか?実はアルファベットの元となるフェニキア文字を考案した、現代社会にも大きな影響を与えている人々です。フェニキア人は、エジプトやバビロニアなどの古代国家の隙間にあたる地域に住みながら都市国家を成形し、盛んな海上交易を行っていました。

地中海全域を舞台に貿易をしていたことで、いろんなものを地中海全域に広めていたわけです。最終的には北はアイルランド、南は西アフリカまで到達していたそうです。すごいです!

フェニキア人は優れた航海術をもっていて、特産品のレバノン杉や、衣類を紫色に染められる珍しい染料を販売していました。紫色の染料は貴重で高価だったので、権力の象徴でした。日本でも聖徳太子が定めた「冠位十二階」で紫は最上位を示す色ですよね。




2.リネンの価値は宝石と一緒?


フェニキア人は地中海の港をうまく利用して、さまざまな国家やとしで手に入れた商品を別の諸国家や都市に売ることで栄えていました。すごい商売上手です!そしてエジプト人とも交流があったわけです。

やっと本筋に戻れます。エジプトの王家は、金銀や宝石などを欲しがっていたんですね。そこでフェニキア人は、エジプト人がつくるリネンと宝石を交換するんです。

え、リネンめちゃ高いじゃん!と思いますよね。
高級品なんですよリネンって。
この頃、エジプト人だけがリネンの織り方を知っていたんです。
とても価値のあるものだったんです。

フェニキア人が海上貿易で成功するためには、優れた船が必要なわけです。そのためにリネンは欠かせないものでした。エジプトの質の高いリネンは船の丈夫な帆をつくるのに最適だったんです。そして優れた船がつくれたおかげで、フェニキア人は古代の貿易を大きく担い、発展させることができたんです。

そしてリネンはフェニキア人によって、ギリシャ、ローマを経てヨーロッパ全体に広がっていきました。ベルギーやオランダでも、紀元前5000年-3000年前のものとされる亜麻(フラックス)の種子が発見されています。

この頃にはヨーロッパでも栽培までおこなっていたってことですよね。




3.リネンは娘の嫁入り道具だった?



12世紀にはすでに中部ヨーロッパでリネンの織物が流通していました。
中世にリネンをもっとも活用していたのはヨーロッパの人たちです。
リネンは身近な繊維で、生活になくてはならない布でした。

「イタリアでは女の子が生まれると、リネンのベッドシーツ・ピロケース・テーブルクロス・ランチョンマットなどを成長とともに少しずつ母親が手作りをして、結婚するときに嫁入り道具として持たせていた」など、リネンにまつわるヨーロッパでの伝統や文化、習慣はとてもたくさんあり、生活衣料品としての役割を果たしていたことがうかがえます。

リネンを大切に使い続ける習慣はあるものの、あまりに丈夫なリネンは全部を使い切れずに、アンティークリネンとして現在に残っているものが多くあります。




4.「フランダースの犬」のネロのシャツもリネン?



14世紀には百年戦争の影響で、ヨーロッパ内は混乱に陥りました。そこでリネンの栽培も衰退の危機を迎えます。

各国が混乱していましたが、この時代にフランス、オランダ、ベルギーにまたがる「フランダース地方」でリネン栽培を継続したおかげで、リネンは安定供給できていました。

そしてフランダース地方はこれを機にリネンが主要産業となります。

現在でもフランダース産のリネンはとても人気がありますよね。おなじみ「フランダースの犬」で地名を知っている人も多いでしょう。余談ですけど、アニメ世界名作劇場をみてみると、主人公のネロのシャツもちゃんと亜麻色(生成り)のリネンですね。さすがフランダース。

古代から中世へ、何世紀にもわたって育ったリネン文化は、18世紀のヨーロッパで花開きます。長い歴史のなかでも、リネンの生産量が多く、まさに全盛期。この頃は全世界の中で当時もっとも生産されていた繊維はリネンだったとも言われています。ヨーロッパ全域でもリネンの栽培は盛んにおこなわれていました。

その後、18世紀後半になると産業革命が始まります。産業革命といえば……そうです、新しい工業として綿工業が始まるわけです。世界史で習ったよね。ここから機械化で綿織物が普及します。

そんな時代の大きな波を経ても、今でもリネン人気は健在です。リネンってすごい!




5.今回のまとめ

  • ・フェニキア人がエジプトからリネンを広めた
  • ・エジプトのリネンは宝石と交換されていた
  • ・リネンは嫁入り道具として持たされていた
  • ・18世紀にリネンは世界中で人気を博した


文・綿貫大介 写真・Pixabay / 綿貫陽介


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世界のリネンの歴史を知りたい!-古代エジプト編-


リネンは世界文明発祥の地であるチグリス川・ユーフラテス川に芽生えた、世界最古の繊維といわれています。 そんな長い歴史を経て人間に寄り添い、使い続けられてきたリネン。今回はそんなリネンの物語を、歴史のなかから紐解きます。





1.メソポタミア文明にすでに亜麻が?


リネンのもととなる植物・亜麻(フラックス)は、紀元前8000年頃のティグリス川・ユーフラテス川に生えていたことが確認できています。 ティグリス川・ユーフラテス川といえば、世界史で出てきましたよね。そう、世界最古の文明であるとされてきた、あのメソポタミア文明が生まれた場所です(現在のイラクの一部にあたる場所です)。 この地域には、これらの川があったおかげで農業が発達し、食糧生産が増え、人口が増加し、発展していきました。そのため、このメソポタミア地域を「肥沃な三日月地帯」と言い表していました。ここまでは高校の世界史Bで習いますよね。 小麦や大麦などが栽培され、無発酵のパンなどがすでに食べされていたと言われていますが、亜麻も栽培されていたんです。 亜麻は寒い地方で栽培されているイメージがありますが、原産地は中東近辺と言われています。亜麻についてはこちらも参照してみてください。 リネンはずっと人類とともに歩み続けてきた天然繊維なんですね。




2.古代エジプトではリネンが主流?


ナイル川流域のエジプト文明でも、繊維は亜麻が栽培されていました。
世界最古の紡ぎ器はエジプトのファイユーム湖畔で発見されています。これで少なくとも紀元前5000年頃からエジプトには糸を紡ぐ技術があったことがわかりますね。

それと一緒にリネンの布の残骸も発見されているんです。リネンの布はエジプト文明ではすでに使われていたんですね。

古代エジプトでは紀元前3世紀ごろから、ナイル川流域でリネンが生産、輸出されていたようです。
古代エジプトにおいて、リネンは「月光で織られた生地」とも呼ばれ、ミイラを巻く布、神事における神官の衣装などに使わてきました。

なんだかもう、『世界ふしぎ発見!』のクエスチョンを出題されているような気分ですよね。知っている内容には心の中でスーパーひとしくんを掲げてみてください。

神事に使われるほほど神聖なものであったリネン。
ちなみに、古代エジプトの神話では、亜麻は女神イシスが作ったものとされています。イシスは兄であり、夫でもある神オシリスが弟のセトに殺されたときに、オシリスの体を包む布を織るために亜麻を使いました。
それによりオシリスは復活するというお話があるんです。そこからリネンに「聖なる布」というイメージが生まれたのかもしれませんね。




3.服飾史で最古の下着はリネンだった?



これはwafuのトランクス(下着)ですが、服装史において最も古い下着は、このエジプトの古王国時代にリネンで作られた「シェンティ」と呼ばれるものと言われています。

奴隷が着ているものは単なる腰巻き、もう少し位が上の人ではふんどしのようなものをイメージしてください。
とくにこの頃は下着と上着の区別ははっきりしているものではなくて、性別も階級も関係なくほとんどの人がシャンティのみで過ごしていたようです。

古代エジプト人はみんな白いリネンを身に着けていたんですね。

エジプトは牧畜も盛んだったので、羊毛の入手も容易にできたはずですが、主に使用されていたのはリネンです。なぜみんなリネンのシャンティを着用したかというと、素材の清涼感ということとは別に、感染症を防ぐ目的がひとつにあったと思います。

そのとき服としての機能を考えると、麻という素材は抗菌性があるのでとても理にかなっているんですよね。

ちなみにミイラを保護する布としてリネンが使われたのは、上質なリネンが神聖なものであったということのほかに、防虫性能にも優れていたからだとも言われています。
ミイラを保護する布を虫に食べされてしまっては困りますもんね。




4.現在する最古の織物ドレスもリネン?



また、エジプトのとある墓地で見つかった、現存する織物のドレスとしては世界最古の「タルカン・ドレス」もリネンでできています。

5000年前のものですよ!

実物のワンピースがナショナルジオグラフィックのウェブサイトで見れますが、著作権の関係上画像が使えないので(涙)写真は首元が似たデザインのwafuのVネックワンピースです。。イメージでお楽しみください…。

それはともかく、単に体に巻きつけたり覆ったりするものばかりではなく、細部まで手の込んだオートクチュールドレスもあったということは、専門の職人もいたということですね。
現存するものは腰上丈ですが、元々は膝下まであったと考えされています。

腕にぴったり添う袖とVネックの首元、幾重もの細かいプリーツがあしらわれたデザインは、現在でも通用するようなデザイン。そこから技術の高さがうかがい知れます。これは完全に当時の社会の繁栄を物語っていますね。
もちろん、こんなドレスを着られたのは、上流階級の人々だけだったと思います。




5.今回のまとめ

  • ・紀元前8000年頃のメソポタミアで亜麻は栽培されていた
  • ・古代エジプトではリネン素材がスタンダード
  • ・世界最古の下着も、現存する最古の織物ドレスもリネン


文・綿貫大介 写真・Pixabay / 岡田さん / 笠原


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リネンの原料の亜麻(フラックス)は栽培が難しい? 良質な産地や栽培方法は?


リネン素材の原料となるのは、亜麻(フラックス)という植物です。
古代から栽培されているこの植物ですが、実際に育っているところってなかなか見たことがないですよね。
亜麻(フラックス)ってどんな植物で、どのように栽培されているんでしょうか。
これを知ったらもっとリネンが好きになる!





1.やっぱりリネンの一大産地はヨーロッパ?


約1万年の歴史がある亜麻(フラックス)の栽培。
人類がはじめて栽培した植物のひとつと言われているくらい、ずっと人間の生活を支えてきた植物です。

亜麻(フラックス)は紀元前8000年~7000年ころには現在のトルコやシリアを中心とした地域で、紀元前5000年~2000年にはエジプトでも栽培されるようになりました。

その後は世界各地で栽培されるようになり、現在の収穫高は
1位 フランス
2位 ベルギー
3位 ベラルーシ
4位 ロシア
5位 中国
以下、イギリス、オランダ、エジプト、チリ…
となっています。

パリにあるヨーロッパリネン連盟によると調査によると、現在世界のリネン生産高はヨーロッパが90%以上を占めています。その中でもフランスが約80%、次いでベルギーが約15%。

なかでも有名なのは、良質なリネン生産地が集中している「フランダース(フランドル)地方」フランス北部からベルギー西部、オランダ南部まで3つの国境を越えたこの一帯は、リネン栽培に適した涼しい気候と、川の流れる自然環境でつながっています。

自然に国境はないので「フランス産」「ベルギー産」と別れていても、この地域のリネンは同じ風土で育った良質なリネンです。


ちなみにリネン製品の原産国表記に「中国」と書かれているものをみるケースも多いかと思いますが、それはリネンの紡績工場が中国に集中している要因もあります。
フランスやベルギー産のフラックス原料を使用しているけど、そのあと中国で紡績した糸で製品化したリネン製品というパターンも多いです。




2.亜麻(フラックス)畑ってどんな様子?


では亜麻の畑の様子をみてみましょう。
繊維をとるために植えられる亜麻(フラックス)は、北部ヨーロッパなどの寒冷な地方で栽培することができる一年草です。

春になると種をまき、そこから2か月半で高さが1メートルほどにもなる、とても生育のいい植物なんです。涼しい土地で、短期間で勢いよく育つので、農薬もほとんど使用する必要がありません。除草剤や化学肥料などの力を借りることなく、ぐんぐん育ちます。

つまり、人体にとっても安全で、土壌を荒らすこともない、地球環境にやさしい、エコな植物なんです。

ただ、生育が早いということは、土壌の肥料分を多く消耗します。そのため、亜麻(フラックス)栽培は輪作で行われます。




3.亜麻(フラックス)はほかの農作物と交互に育てる?



亜麻(フラックス)は一回収穫すると土壌が痩せてしまうため、収穫量や品質を保つために最低5年は同じ畑に亜麻(フラックス)を植えません。

その間は大麦、小麦のほか、マメ科の植物やじゃがいも、チコリなどを育て、輪作を行います。輪作とは農業の手法のひとつで、同じ土地に別の農作物を何年かに一回のサイクルで作っていく方法です。栽培する作物を周期的に変えることで、土壌の栄養バランスが取れ、収穫量・品質が向上するんです。


つまり常に良質なリネンを仕入れるためには、輪作年数を考慮した(だいたい6〜7年周期)広大な農地が必要になっていきます。

そんなわけで亜麻(フラックス)畑の隣には、かならず別の作物が育っています。

亜麻(フラックス)から繊維をとるのがどんなに大変かお分かりいただけたでしょうか……。これがリネンが貴重で高価な繊維である背景のひとつです。

さらに亜麻(フラックス)は年々栽培面積が少なくなってきています……。




4.花が見られたら超ラッキー?



そんな亜麻(フラックス)、毎年6月頃にかわいい花を畑いっぱいに咲かせます。
実はこの開花している姿は、滅多にお目にかかれないんです。

なんでって、花の開花時期は一年でたった一週間程度。しかも朝方に花が咲き、夕方にはしぼんでしまうんです。フラックスの花の独特な青色をしており、現地では「フラックスブルー」と表現されているそうです。

5枚の花びらと、五角形のおしべとめしべ。よくよくみると均等が取れていて、小さな花からは数学的な美しささえ感じますね。波打つように風にゆれる亜麻(フラックス)畑、実際見たら圧巻なんでしょうね。

日本では北海道の一部で栽培されていて、現在は町おこしとして栽培されています。

近年はアマニ油など、亜麻(フラックス)の種子がスーパーフードとして人気が出ている背景もあり、再び亜麻(フラックス)が注目されているんです。

風が吹いても折れることなく、柔らかく受け流す姿はまるで、ジブリアニメに出てくる草原のような美しさなのではと勝手に想像してしまいます。強くしなやかな亜麻(フラックス)。そこから丈夫な繊維がとれるのもうなずけます。




5.今回のまとめ

  • ・リネンの一大産地はフランス
  • ・亜麻(フラックス)は寒冷地で育つ一年草
  • ・亜麻(フラックス)は農薬いらずのエコな植物
  • ・亜麻(フラックス)は同じ畑で作り続けることができない
  • ・可憐な青い花の見頃は朝方の1週間


フラックス収穫高参照:FAO(Food and Agriculture Organization)http://www.fao.org/home/en/

文・綿貫大介 写真・Pixabay


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