一流の引継ぎ
【それはステータス】
私がこの仕立ての仕事を始めて間もなく先代が鋏(ハサミ)を譲ってくれました。
「長太郎」という名の裁ち鋏です。
切れ味は他のハサミの比ではありません、スムーズで生地が逃げない。
通販番組のトマトを切るシーンのようです。
刀鍛冶の技術でつくり上げた裁鋏の最高峰。
職人の憧れとして100年以上の歴史がございました。
しかしながら3代目の引退により平成26年生産終了。。
素晴らしいものがなくなっていくことに歯止めがかけられない
虚しさを感じました。
布の裁つ作り手を増やして、鋏に再びスポットがあたること。
上質な手づくりの鋏は職人にとってステータスです。
上が先代の長太郎。
今年48年目、まだまだ切れ味が衰えません。
メンテナンスもしながらこの調子で生涯現役であろうと思います。
上質なものを作る時、いつもそばにあります。
信頼してるということですね。
そういうものの存在ってふと気が付くと本当素晴らしいですね。
私はまだまだ先代の領域までには遠く及びません。
ただ背中を見せてくれる人がいれば後に続きます。
やってやるぞという気持ちです。
文・綿貫陽介