服の「襟」を、改めて考えてみる。種類は?歴史は?ーwafu的ファッション辞典
さて、今回のファッション辞典は、「襟」について真剣に考えてみたいと思います。
生まれてこの方、「襟」について真剣に考えたことのなかった私、
だからこそ、真剣に、考えてみようと思うのです。襟のことを!
いつごろから服に襟がついたのか、その種類はいかほどか、襟と顔の印象の関係は?
といった角度から、襟を見てみましょー。襟のこと、服のことがもっと好きになります。
<目次>
オープンカラー / オフィサーカラー / オフ(タートル)ネック
キモノカラー / ショールカラー / スキッパーカラー / スタンドカラー
セーラーカラー / ノーカラー / ホリゾンタルカラー and more…
1.「襟」の定義とは?
服を知っている方で、「襟」と聞いてなんのことか分からない、という方は、
ほとんどいないかと思いますが、
服の首周りの部分や首周りについている部分のことですね。
ファッション辞典を開きますと、その定義は、
「衣服の首周りの部分、あるいは首周りについている部分のこと。」
とあります。
実はもっと細かくいうと襟にも、
「カラーとラペル」という部分が存在します。
画像の黄色部分がカラー。緑色部分がラペル。
カラー:見頃(服の上半身を包む部分)に取り付けられた部分
ラペル:見頃が折り返った部分
この襟の種類を、「首周りの部分」という広い意味でとらえると、
思ったよりも多くなってしまい、
今回の記事では収集がつかなくなりそうですので、
今回はいわゆる上記のカラー「服に取り付けられたタイプの襟」をピックアップしてみます。
2.襟の種類はどのくらい?
上記で、今回は襟を「服に取り付けるタイプの襟」と定義・範囲を絞ったのですが、
それでも多い、襟の種類!!
ファッション疎子の私にとって、なんでそんなに違う襟の形が必要なのか?
と「なんでもいいじゃないか~」と思ってしまうのですが、
いやこれが違うのですよね。
こちらがいちばんシンプルなレギュラー・カラー。
これ以外にものすごくたくさんの種類があるなんて、信じられますか?
(アパレル関係のみなさん、ゴメンナサイ…)
あとで書きますが、そもそも襟のデザインは男性のシャツから来ていますよね。
ビジネスや社交のシーンで、顔周りの印象はとても大切です。
襟の形が少し違うだけで、フォーマルな印象になったり、ラフな印象になったり。
それを、時と場合で使い分けることが、社交の場では重要だったりします。
最近はクールビズで、暑苦しくなく、されどフォーマルな印象に見える
襟のシャツを選ぶ方も多いのでしょう。
とは言え、やっぱりこの襟の種類、ネット検索していただければ分かると思いますが、
細かく見ると、とにかく多い!!襟の開き具合がちょっとかわると名前が変わるのです。
ネクタイをどうやって留めるかとか、ボタンが付いているかいないかとか。
また、スタンダードな形の襟の形にも流行があり、少しずつ変わるのだとか…。
いやこの詳細はそういったウェブサイトにおまかせしましょう。
ということで、wafuで取り扱っている作品の襟について、
五十音順でお伝えしますね。
オープンカラー / オフィサーカラー / オフ(タートル)ネック
キモノカラー / ショールカラー / スキッパーカラー / スタンドカラー
まあどんなにカジュアルな襟であっても、もともとは男性のシャツのデザイン、
襟がついた服は、どこか固めの印象を与えます。
そんな襟がレディースシルエットと組み合わさることで、
固さと柔らかさをバランスよく兼ね備えた、
使い勝手のいいアイテムになります。
そんなわけで、素敵な襟がついた作品を、
襟のうんちくとともに見てみましょー。
【オープンカラー】
いきなり説明が難しいものから…。
‘オープン’の文字通り、開きのある襟です。
カラーと、それにつながった部分が外側に小さく折り返る形(ラペル)が特徴です。
私も説明を読んでいてよくわからなかったので、念のため…
上記の写真をもう一度。おさらいです。
カラーとは、上記写真の黄色の部分、ラペルとは、緑色の部分です。
オープンカラーは、ラペルが小さく外へ折り返っていますね。
整っていながら、襟が閉じきっていないので、堅苦しくなく、スタイリッシュです。
オープンカラー
【オフィサーカラー】
軍の将校や士官などの制服がモチーフとなった襟。
オフィサー(officer)が、将校、士官などのことなんですね。
軍服と聞いて思い出すような立ち襟、もしくは立ち襟から折り返った襟。
さすが軍服がモチーフと合って、固いイメージがありますね。
威厳のある感じです。
たださすがにあまり固いと着こなしは難しいですので、
そこまでかっちりした襟のデザインではないのでご安心を。
オフィサーカラー
【オフ(タートル)ネック】
オフという英語には「離れる」という意味があり、
オフネック、だと、首から離れたところにある襟、という意味になります。
形はタートルネックと同じですが、首から離れていますね。
ゆったり感もありつつ、首元が程よくポイントになっています。
オフネック
https://handmade-wafu.com/SHOP/list.php?Search=%E3%82%AA%E3%83%95%E3%83%8D%E3%83%83%E3%82%AF
【キモノカラー】
読んで字のごとく、着物の衿のかたちをもとにデザインされた襟のこと。
最大の特徴は、その打ち合わせ(前合わせ)。
帯状の襟が重なっている部分ですね。これは洋服には見られない形です。
だからこそこのかたちに、和を感じるのでしょうね。
キモノカラー(着物襟)
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【ショールカラー】
丸みのある長い襟。ショールを首からかけたような形に似ていることからこの名前に。
和名「へちま襟」。へちまのようなかたちに見えたことから来ています。
もとはタキシード、そのもとをたどると
100年ほど前の男性のリラックスウェアから来ている襟の形のようです。
情報源は見つけられませんでしたが、おそらく丸みのあるかたちが、リラックス時に適していたからかなあと思ったり。
角がなく、あまり「襟!」という主張がないので、やわらかく優しい印象になりますね。
ショールカラー
【スキッパーカラー】
シンプルな、誰もがイメージする襟の形ですが、
第一ボタンに相当するボタンがなく、開いて着るタイプの襟。
きっちりと締まりきっていないので、ラフな印象もあっておしゃれですね。
スキッパーカラー(厳密にはスキッパーカラーではありませんが、スキッパーカラーのようにも着れる作品も入っています)
https://handmade-wafu.com/SHOP/list.php?Search=%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%83%E3%83%91%E3%83%BC
【スタンドカラー】
服の首の部分から立ち上がった襟のこと。
19世紀、男性のYシャツの原型が今のような形になった時期に、
様々な襟の形が新デザインとしてたくさん生まれました。
その時期に登場したデザインのひとつが、スタンドカラー。
高すぎない立ち感が、ほどよいポイントです。
堅苦しくなく、されどラフすぎない、絶妙感が楽しめます。
こちらの作品は、スタンドカラーとギャザーの組み合わせで、
可愛い印象が割増ですね。
スタンドカラー
【セーラーカラー】
セーラー服でもお馴染み、セーラーカラー。
もとは船乗りの服装(海軍の制服)というのは有名(「セーラー」は船乗りという意味ですね)ですが、
襟の背中の部分が広く、長方形の形をしているのは、
それを上にあげて、海上の音(汽笛など)を聞くための仕様だったとは、初めて知りました私。
前のショールカラーのような形、後ろの大きな襟の動きが楽しいです。
セーラーカラー
【ノーカラー】
襟がない、その名の通りノーカラー。カラーレスとも言うみたいですね。
襟ばかり見ていると、すごくさっぱり見えます。
襟元が一気にラフな印象に。
ノーカラー
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【ホリゾンタルカラー】
これは、一番シンプルなレギュラーカラーと呼ばれる、
誰もがイメージするような襟の形の、襟の開きが大きくなったものですね。
ホリゾンタル、とは地平線の、という意味で、襟の直線ラインのことを指しています。
ちなみに、こちらはものによってはカッタウェイカラーとも呼ばれるそうです。
カッタウェイとは切り落とし、という意味。
レギュラーカラーの角の部分を切り落としたような形からそう呼ばれます。
ただどれがホリゾンタルでどれがカッタウェイかは諸説あり、
お店によっても定義が違うようです。
レギュラーカラーの角がなく、襟の角度が広がっているので、
襟の固さもありつつ、若干カジュアルで、ポイントにしやすい襟の形です。
ホリゾンタルカラー
3.あなたに似合う、襟の形とは?
”襟は顔の置き台”
といわれますが、やはり、顔に近い部分にあり、その印象を左右する襟。
自分にあったものを選びたいですね。
自分の顔の印象(自分が感じる自分の印象と他人が感じる自分の印象、両方を参考にしながら)に、
近い雰囲気の襟を選ぶのが無難なようです。
私はどちらかというと丸顔童顔な方で
全体のバランスを整えたいときは、自分の丸顔童顔に合った、
ショールカラーや立ちすぎないスタンドカラーが割と良いようです。
…というのは、現在尊敬しているスタイリストさんからの受け売りです。
上記で紹介したwafu作品で、その形と雰囲気(直線と曲線から印象が変わります)から、
襟の印象マップを作ってみました。
この表はあくまで今回紹介したもの、とくに襟の形に限ってのものです。
服全体となると話はまた違ってきますので、ご了承くださいませ。
お好みの襟が見つかったり、
また自分が今まで着なかった襟に、できる範囲でチャレンジできる
お手伝いとなればいいなと思います。
4.深い?浅い?襟の歴史
全然読み飛ばせる項目なのですが、私は発祥と変化といった歴史に興味があるので、
襟の歴史を調べてみました。
資料が西洋のものが多かったので、そちらに偏っていると思いますし、
研究者ではないので、憶測も多いと思いますが、ご容赦くださいませ…。
襟はシャツにつきもの。シャツのはじまりは、
古代ローマ時代(今から2000年ほど前)のチュニックから、
ということはネットで調べることができます。
(よく映画とかで見る白い布巻いてるやつ)
人類が縫製をしはじめたのは、はっきりしませんが、意外と大昔(1万年ほど前)のようです。
その技術が格段に発展するのは、機械が登場する時期まで待つことになったようで、
それまで昔の服はイメージにあるとおり、大きな布1枚で体を包むものや、
長方形の布の中央に穴をあけ、その穴に頭を通す貫頭衣が多かったようです。
その歴史上の衣服を1000年前ころまで見ていくと気がつくのですが、
そこにはまだ、襟という襟は登場しないのです。
襟をつけるって、自分でやってみようとすると、作業工程は増えるし、
細かい部分なので作業も大変。
これを効率的にしようとするとなると、それなりに仕組みや器具が必要なので、
その部分が体系化されるまで、時間がかかったのですねー。
歴史上の衣服の絵等を追っかけていくと、服の首周りのスタイルに少しずつ変化が出はじめるのが、
ざっくり言うと中世(10世紀前後)ということになるでしょうか。いまから1000年ほど前です。
人が服作りに慣れてきたような印象を受けます。
500年前ころになって、やっとこれは襟だ!という突出した形のものが出現します。
「豪華なヨーロッパのお城が出てくるような映画の人々の衣装」と言えばイメージしやすいかもしれません。
首元に出る長めのシャツ襟(ラバ)や襟元がエリマキトカゲのような厚みのあるひだの襟(ラフ)などが登場。
もちろん一般市民は着れなかったと思います。。
更にこのラフという襟は、どう見てもなにかを食べるときに邪魔。
というわけで、下あごの部分がカットされ、扇状になりました。
今の襟のかたちの原型は、ここなのかな?と思ったり。
有名な宣教師、フランシスコ・ザビエルの肖像画を見たことがあるという人も多いと思いますが、
彼の着ている服には、もうすでにシンプルな襟が見られますね。
(この肖像はザビエルが亡くなって100年ほどあとに描かれたようなので、
当時の服装かどうかはわかりませんが、少なくともそのころに襟のようなものはあったと言えます。)
または有名な劇作家・詩人のシェイクスピアの肖像画(本人かどうか怪しい説も…)にも、
ぱっと目を引く襟がありますねー。
もうすこし時代が下ると、首元にリボンフリフリといった襟も登場。
いろいろな形態が登場してきます。
きっと縫製技術も上がって、いろいろな形を作れるようになったことが大きいのかなと予想します。
現在、襟、と言われてイメージする襟のかたちとなってきたのは、
19世紀頃、今から200年ほど前のようですね。
まだ突飛なかたちも多かったようですが、段々と今の落ち着いた折り返し襟となり、
20世紀には、その細かい部分に趣向がこらされて、分類も細かくなったようです。
ショートポイントカラー、 ロングポイントカラー、 ワイドスプレッドカラー
…のように、襟の長さや開き具合で、様々な種類が登場。
これらをすべて大雑把に「襟!」と呼んでしまう私には、
こんな細かい分類があったことが信じられないです。
ともあれ、現在私たちがイメージするような襟の形になったのは百年二百年そこそことなりますが、
襟っぽいものが少しずつ出はじめたのは千年弱ほど前と言えなくもないと思いますので、
その歴史は浅いとも深いとも言えませんが、
その間の人間の服作りの変化は、とても興味深いですね。
余談. 「襟」と「衿」の違い
さて、長々とお話してきましたが、もう終わりですよー。
最後に、今回漢字で気になった点をご紹介します。
ネットでもよく検索されていますが、
「えり」には「襟」と「衿」という2種類の漢字があります。
どちらも服の首周りの部分を指す言葉・漢字なので、どう使ってもいいようなのですが、
いろんな資料を見たり、ネット検索をしていると、
「襟」・・・英語のカラーが示すような、洋服の首周りをあらわす「えり」の場合。常用漢字。
「衿」・・・着物などの和服の首周りをあらわす「えり」の場合。非常用漢字。
という使い分けがなされる場合が多いようです。
またファッション辞典では「衿」という漢字が使われていました。
この漢字にしろ、えりそのものにしろ、
種類はどっちでもいいと言ってしまえばそれまでなのですが、
種類や違いがあるということは、そこに意味があるということ。
その意味におもしろみを感じてみると、世界がまた一段味わい深くなるなあと、
今まで気にもしていなかった襟のことをたくさん調べて、
思ったのでした。