リネンっていつから着られてるの? 世界のリネンの歴史を知りたい!〜中世ヨーロッパ編〜

リネンといえばヨーロッパ。そんなイメージを持っている人が多いのではないでしょうか。

アイリッシュリネン、フレンチリネンなど、ヨーロッパ生まれのリネンは今でも品質の良さに定評があり人気です。

 

では、ヨーロッパでリネンはどう定着していったのでしょうか。今回はヨーロッパリネンのお話です。

 

 

1.リネンをヨーロッパに伝えたのは海に生きた商人?

 

古代エジプトで芽生えたリネン文化(エジプト編へのリンクつける)はヨーロッパへと広がり、それからしっかりと根づいていきました。

ヨーロッパ伝統社会にその長い歴史を築き上げてきたリネン。今でもヨーロッパはリネンの一大産地です。

 

エジプトからヨーロッパへとリネンを伝えたキーマンが、フェニキア人です。聞いたことありますか?

実はアルファベットの元となるフェニキア文字を考案した、現代社会にも大きな影響を与えている人々です。

 

フェニキア人は、エジプトやバビロニアなどの古代国家の隙間にあたる地域に住みながら都市国家を成形し、盛んな海上交易を行っていました。

地中海全域を舞台に貿易をしていたことで、いろんなものを地中海全域に広めていたわけです。

最終的には北はアイルランド、南は西アフリカまで到達していたそうです。すごいです!

 

フェニキア人は優れた航海術をもっていて、

特産品のレバノン杉や、衣類を紫色に染められる珍しい染料を販売していました。

紫色の染料は貴重で高価だったので、権力の象徴でした。

日本でも聖徳太子が定めた「冠位十二階」で紫は最上位を示す色ですよね。

 

 

 

2.リネンの価値は宝石と一緒?

 

フェニキア人は地中海の港をうまく利用して、さまざまな国家やとしで手に入れた商品を別の諸国家や都市に売ることで栄えていました。すごい商売上手です!

そしてエジプト人とも交流があったわけです。

やっと本筋に戻れます。エジプトの王家は、金銀や宝石などを欲しがっていたんですね。

そこでフェニキア人は、エジプト人がつくるリネンと宝石を交換するんです。

 

え、リネンめちゃ高いじゃん!と思いますよね。

高級品なんですよリネンって。

この頃、エジプト人だけがリネンの織り方を知っていたんです。

とても価値のあるものだったんです。

 

フェニキア人が海上貿易で成功するためには、優れた船が必要なわけです。

そのためにリネンは欠かせないものでした。

エジプトの質の高いリネンは船の丈夫な帆をつくるのに最適だったんです。

そして優れた船がつくれたおかげで、フェニキア人は古代の貿易を大きく担い、発展させることができたんです。

 

そしてリネンはフェニキア人によって、ギリシャ、ローマを経てヨーロッパ全体に広がっていきました。

ベルギーやオランダでも、紀元前5000年〜3000年前のものとされる亜麻(フラックス)の種子が発見されています。

この頃にはヨーロッパでも栽培までおこなっていたってことですよね。

 

 

 

3.リネンは娘の嫁入り道具だった?

 

12世紀にはすでに中部ヨーロッパでリネンの織物が流通していました。

中世にリネンをもっとも活用していたのはヨーロッパの人たちです。

 

リネンは身近な繊維で、生活になくてはならない布でした。

 

「イタリアでは女の子が生まれると

リネンのベッドシーツ・ピロケース・テーブルクロス・ランチョンマットなどを

成長とともに少しずつ母親が手作りをして、結婚するときに嫁入り道具として持たせていた」など、

リネンにまつわるヨーロッパでの伝統や文化、習慣はとてもたくさんあり、

生活衣料品としての役割を果たしていたことがうかがえます。

 

リネンを大切に使い続ける習慣はあるものの、あまりに丈夫なリネンは全部を使い切れずに、

アンティークリネンとして現在に残っているものが多くあります。

 

 

 

4.「フランダースの犬」のネロのシャツもリネン?


 

14世紀には百年戦争の影響で、ヨーロッパ内は混乱に陥りました。そこでリネンの栽培も衰退の危機を迎えます。

各国が混乱していましたが、

この時代にフランス、オランダ、ベルギーにまたがる「フランダース地方」でリネン栽培を継続したおかげで、リネンは安定供給できていました。

そしてフランダース地方はこれを機にリネンが主要産業となります。

 

現在でもフランダース産のリネンはとても人気がありますよね。

おなじみ「フランダースの犬」で地名を知っている人も多いでしょう。

余談ですけど、アニメ世界名作劇場をみてみると、主人公のネロのシャツもちゃんと亜麻色(生成り)のリネンですね。さすがフランダース。

 

古代から中世へ、何世紀にもわたって育ったリネン文化は、18世紀のヨーロッパで花開きます。

長い歴史のなかでも、リネンの生産量が多く、まさに全盛期。

この頃は全世界の中で当時もっとも生産されていた繊維はリネンだったとも言われています。

ヨーロッパ全域でもリネンの栽培は盛んにおこなわれていました。

 

その後、18世紀後半になると産業革命が始まります。

産業革命といえば……そうです、新しい工業として綿工業が始まるわけです。

世界史で習ったよね。ここから機械化で綿織物が普及します。

 

そんな時代の大きな波を経ても、今でもリネン人気は健在です。リネンってすごい!

 

 

 

5.今回のまとめ

・フェニキア人がエジプトからリネンを広めた
・エジプトのリネンは宝石と交換されていた
・リネンは嫁入り道具として持たされていた
・18世紀にリネンは世界中で人気を博した

 

 

 

 

文・綿貫大介 写真・写真・Pixabay 綿貫陽介

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