手紙。
朝、仕事に出掛ける為に玄関を開ける。
ポストに手を伸ばすと8歳の息子が書いた手紙があった。
サンタクロース宛らしい。 かわいいもんだな。
お昼に差し掛かり、一緒に働いている妻に促され サンタ宛の手紙の封を開けた。
封筒も手作りで作ってあるのとサンタと会話をしているようなキャチーな一言「サンタさん冬ですね。」に胸の中で引っかかる何かあった。
それは僕たちwafuがもっとも大事にしている手仕事と双方向のコミュニケーションに他ならない。
wafuの作品を自宅で紐を解きながら開けるあの瞬間に似た感覚と想像していただければ近いかもしれない。
そんな感覚で手紙を出してみる。
しかしそれは 我が子としての想像を遥かに超えたもので 経営者の僕からみたその中身は悪魔の手紙とも言えるものであった。
僕が生きているこの社会という荒波は努力し経験し、学び、血反吐を吐きながら目標に向かって手にしたいものを掴むものである。
なかなか自分の思うようにいかない、何かがほしければ何かを捨てる。それが人生だろう。
僕はその手紙の封筒から感じた違和感から恐る恐る手紙を開いた。
紙の縁をカラーで囲い、手紙真ん中部分の文字に集中させるようなつくりになっていてには真ん中には自分の欲しいもの、いわゆる欲求が書いてある。
商品タイトルと品番が書かれており、
自分の努力が右斜め上に書いてありアピールポイントを2つ設けてある。「~も」というのもこればかりではないです。というさらに、まだまだ。という人心的要素を埋め込んである。
そしてサンタへの要求はエスカレートする。
絶対に間違わないでほしい、その思いが この ほしいおもちゃの広告を切り取って貼り、欲しい色も「赤です。黄色じゃないよ。」と事細かくテキストを入れ込んである。
商品タイトルと品番、画像まであり、全体の文を繋ぎわせると間違えようがない状態になっている。
そのおもちゃをもらうときは僕は布団で寝ていますとオケージョンを想像させるイラスト付き、極め付けは質問形式で「サンタさんはお元気ですか?」と聞いてくる始末。
これはメールを活用してる現代人にはお分かりの通り、その何気ない質問には答えるのが礼儀という、人間道徳的な心理をうまくつている。
怖い、もっと怖いと思ったのは、
僕たちは文章を、人間工学的に目の動きの作用で自然と位置で見ています。
広告チラシでは視認性の高いZの法則とうものがあります。
※Zの法則とは、紙媒体やコンビニの棚などを見る際に、文字通り、左上から見始めて、右→左下→右と「Z」の順番に視線を動かすという法則のことです。
この手紙にもゴリゴリに盛り込まれていた。
これは、かわいい手紙なんかではない。ある種のプレゼンであった。
僕はこの人生で、優位に生きてきく為に目をこすりながら本を見て学び、恥を偲んで人から聞いて、失敗を繰り返しながら頭を下げて得てきたノウハウは、たった8歳の息子にいとも簡単に習得され
手紙を読んだ30秒後にはamazonで決済「ありがとうございました。」とPCの画面に表示されていたのだった。
すでに品番違いのおもちゃを買って用意していたのもかかわらずだ。
彼は徳川慶喜に無血開城をさせた新政府軍ように 僕から「寝坊せずにおきなきゃサンタが来ないよ。とか 宿題しないおもちゃ買ってあげないよ。」というギブアンドテイク的な戦いから手紙一枚ですべて解決させてしまっていた。
社会に密接に関わるとどこにでもにいるであろう、岩のように硬い心の人。
この心を動かさなければならない事がある、これもまた人なのであろう。
そんな事を立ち止まって考えさせられた息子からサンタ(自分)への手紙のであった。
文/写真・綿貫陽介