2018年 事業を振り返る 5月~9月
文章長いし横文字多いのでどうしても読みたい方だけにしてください。
無理に読んでもなんにも特はありません。
5月
とうとう言うときが来た。入学式も無事終わり、一人の漏れもなくすべての新入生に制服が手渡された。
もう、ずっと考えた。学生服の工賃の見直し案を取引先に出す。
けむたい話だし、相手の社長はうちの父と同じくらいの年、子供みたいな年齢のやつに言われるのも癪に障るのかもしれない。
工賃は1.8倍くらいの値上げを申請するつもりでワードで(案)工賃表を作成した。
一着生産はやればやるほど赤字になってしまい、このOEMには僕自身もう、明日がみえない状態であった。
入学シーズンは赤字でもオフシーズンに備蓄ということで仕事を頂いていて納期がかなりあるから時間を調整しながら売上を立てることができていたのだ。
もし、拒否されて仕事がなくなっても仕方がない、自社ブランド一本で突破口を開いてやる。もう腹をくくっていた。
アポイントを取って社長はに会いに行った。
スプリングがきいた少しくたびれたソファにとおされて2人きりで話が始まった。
おおよそ言われることは想定していたようで、耳を傾けてくれた。
学生服も会社が販売に値段を勝手に決めることができない。実際は教育委員会や学校が決める。と言っていい。それが大きな壁だ。
この十数年でこんなにも人件費や資材は値上がりしているのに 価格は変えれない。制服会社としてはまさに板挟みである。
そんな事情もよく分かるが、僕も決断をしなければならない。意見を押し通したのだった。
社長からは検討して連絡する という言葉をもらい 会社を後にした。
今月16日からは新宿高島屋1Fでの販売会。
販売員はまた畑戸さんにお願いした。1Fは人通りも多く関係者から期待できる場所と報告をいただいていた。
ワクワクした僕も週末は新宿高島屋へ行き、接客をしながらバスの時間ギリギリまで対応した。
ちょうどwafuの商材もリネンがメインなので時期的にもマッチしてwebショップと合わせて160万ほどプールすることが出来、赤字の補填にまわした。
対面販売は強い。
6月
さらに新宿高島屋からお声をかけていただいて 4Fで販売イベントとサイズオーダー会をやる。
トータル一週間だけの販売だがそのうち2日間限定でサイズオーダー会をしている。
毎回、好評なイベントで朝から晩まで接客して一日10名ほどしか対応できないが対面販売の濃密な時間を過ごさせていただいている。
すでに予約が埋まっていて僕はカプセルホテルに泊まりながら2日間接客をしまくった。
高島屋での売上は去年の出店時に比べ急激な伸びを記録し、店舗のお偉方がわざわざこの小さなブースを覗き込むように見に来ていた。という話を後で知った。
何度かイベントを組んでくれるのも信用がついてきた証かもしれないと嬉しくなった。
対面販売は強い。
それと同時に、軽度障害の支援学校から実習場所として名乗りを上げた僕らは
2週間の実習で縫製の仕事を17歳の女の子にゆっくり教えていった。
やや細めな華奢な体つきでメガネ。しかしながら挨拶が大きく、ハキハキとしている。
時には、お昼ご飯も縫製スタッフの河野と一緒に作り、和気あいあいとした空気がこのスタジオに漂う。
明らかに違うみんなの姿勢。 僕たちは社会の先輩としてこの子を成長させて上げたい そんな親心にもにた感覚があったと思う。
彼女のお母さんからも、普段あまりしゃべらない娘がずっとこの仕事のことや、やりがい、失敗、環境のことを話しているという。
こんなことはないですよ!という興奮気味なお母さんの口調が僕のテンションを上げた。
障害者の人が成長する方向としては間違ってはいないと再認識した。
7月
wafuの商材はリネンがほとんどを占める。夏のイメージが強いこの素材は繁忙期を迎えていた。
バタバタと駆け回るスタッフ。夏の開放感も相まって元気な職場のようにみえる。
しかし僕の心境は違う。例年のように来月からの落ち込む売上が目に見えていた。
リネンは夏のイメージが半端ない。薄地で涼しいという一般的なイメージだ。
僕たちの扱う多くのリネンはそんなイメージを覆すしっかりた厚み、しなやかな生地。オールシーズン着れちゃうやつ。
これをどう伝えるか、そしてどういう方法があるか。
この7月を皮切りにいろんなアパレル関係の展示会や業界関係者に会いにく。
卸販売を模索し始めたのだった。
8月
文京区にあるギャラリーで1ヶ月展示販売をさせていただけることになっていた。
作品をパッキンに詰めて送り、ギャラリー内のスタッフが展示、ディスプレイ、接客販売してれるという。
こちら側はスタッフ派遣がなく、マージンこそ高いが、僕も手探りの中でいろんなマーケットが知りたいがゆえ試しにお願いした。
webの方は、麻という素材が故にお盆をすぎるとお客様の購買意欲がみるみる減り、まだまだうちの素材が通年通して着られることが認知されないことに嘆く。
ただ思わぬ事に対面販売のギャラリー文京が好調でどんどん売れている。ええー!、期待していないのに毎日のように売れた品番はメールで送られてくる。
追加で何度も何度もギャラリーに送って、ついにはこの山梨のスタジオまで直接お起こしいただける方も現れた。
思わぬ需要を知り、僕たちの服が受け入れらたことが嬉しかった。
並行して新宿高島屋でもお声がかかり1週間の販売を行った。
催事のブースはエスカレーター前という区画さえない売り場で おそらくだが、隣のラルフローレンや
目の前にある高島屋の肝いりのブランドであるSUIT CLOSETより売っているのではないかとスタッフを含め皆が共通に感じていたと思う。
百貨店販売を通して対面販売が強いのではないか。実際に触ってもらうと吸い込まれていくのか。そんなふうに思った。
この販売での売上でなんとか売上を押し上げる事ができた。
対面販売はやはり強い。
9月
本格的に秋物を打ち出していく季節。
僕たちは弱い立場にいた。服が売れないスパイラルに入った。
シーズンの立ち上がりはいつもこうだ。脆弱な体制が修正ができないリーダーシップのなさに嫌気がでる。
今月は百貨店などの店頭販売はない。webショップこそ収益の柱となった。
このころ展示会が毎週のように開かれ、僕は、運転が優しい笠原というスタッフと車でいろんな展示会を見て回った。
五反田ルームス、ビックサイト、幕張メッセ…もう行けるところはすべて行き、自分たちが展示会にでて卸販売を始めるための接客方法、売り場構成、配置、ノベルティなど研究していった。
webショップと、卸でセレクトショップ向けに展開し二刀流で戦う。
卸販売は6掛くらいなので単純に利益率は下がるが卸したお店が売るために宣伝してくれるから広告費も含めてのことだった。
道中、僕が笠原に「なんでウチの商品って広がっていかないんだろう。」とぼやいた。
自分でも答えが何個か思い当たる節があったが 人の意見を聞きたかったのかもしれない。
笠原は「今そのタイミングではないだけです。」と言う。
wafuというブランドがゆっくりと認知されていることは肌で感じている共通認識であったからだ。
そうだな、、まだやるべきことができていない中で高望みしてしまっていた。
会社に戻り、まず、wafuの商標を出願した。こんなことさえも出来ていなかった。
出張を連発し、指示系統も盤石でない、時期的に売りにくい商材とも相まって約120万の赤字がでた。
先月ONした分がなければ厳しかった。まさにシーソーゲームだ。
つづく
文/写真・綿貫陽介