無敵な時間。

僕は18歳から自動車の専門学校に2年通いました。

400ccのバイクを買って、アルバイトが終わった後一人ふらっとよく遠出をしていたんです。

 

これからどうしていくか、どうなっていくのか。知らない土地で見て感じ、自分に変化が起こるかも。なんて考えていましたっけ。

そのまま野宿も考えて、何かあってはと思い護身用にキックボクシングも習いました。

今は足が胸まで上がらないくらい体硬いけど。

 

帰る家はある。アルバイトで収入はある。社会的に守られてる。なんとも無敵な時間だと今振り返ると思います。

事業として会社を創り後ろ盾のない社会にさらされていると毎日、張り詰めて隙のないようにしている そんな感じです。

 

先日、学生時代の担任から電話があり、服飾科の生徒を一度面接してほしいと頼まれました。

まだ16歳。年齢に比べ小さい体に細い指、あどけない顔の男の子でした。

 

彼は3人家族で早く仕事をしなければならない家庭の事情もありました。

長い時間話をさせていただき、実際のミシンも踏み、この仕事は向かないと本人は思ったようです。

 

16歳で社会に出る。家族の生活を支えるとは並大抵の事ではないです。

何かを捨てなければ得られない境地と言えます。彼でいうなら学生時代というものでしょうか。

僕は家族に守られている無敵時間がありました。

今、その彼をみて過去の自分が贅沢すぎるとさえ思います。

 

長く話した後、履歴書の渡し方や礼儀、印象を良くする方法を実践形式で教え、

彼に白いシャツを仕立てました。採寸するととても小さいシャツです。

 

すっきり体に沿い、面接官にも好印象のはず。

これぐらいしか力になれないがLINEで友達になった。

何か迷ったら連絡しますとの事。

僕の方が得るものが多かったと思う。自分のしたいことを選べるという事だけでもどれだけ幸せな事かを。

文・綿貫陽介

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