みなさんは、wafuでメインとして扱っている、リネンという生地・素材のことをしっかり理解していますか?
リネンって麻のことでしょ? と思っている方も多いかもしれません。
でもその答え、模範解答ではないんです。知らずにそのまま答えていたら、ちょっと恥をかいてしまうかも。
リネンってそもそもなんなのかを知るためには、まず「麻」について知ることが大切です。
「麻」と聞いてどんなイメージを持っていますか?
リネンを知るには、まず「麻」について詳しくならないと!では麻とはそもそもなんなのか。
実は植物の「アサ(麻)」とは、本来、大麻草と呼ばれる一年草のこと。
大麻と聞くとちょっとドキっとしますよね。
けど、大麻は日本では縄文時代から繊維作物や食用として栽培されてきた、
とてもなじみの深い植物なんです。
茎の皮の植物繊維は、麻繊維として麻紙や麻布など加工されています。
実(種子)は食用や生薬の麻子仁(マシニン)として、麻の実油は食用や燃料などになるなど、
さまざまな形で用いられてきました。
この大麻草を繊維利用したものが、「ヘンプ」と呼ばれているんです。聞いたことがある方も多いのでは。
つまり、日本で元来の麻繊維の素材は、「ヘンプ」なのです。「リネン」ではなかった。
ヘンプは身近なところでいうと甚平の素材などで使われたりします。
ほかにも神社のしめ縄や横綱の綱などにも使われていますし、七味唐辛子の中に入っている黒い粒も、麻の実です。
一般的には大麻=マリファナというイメージが蔓延していますが、
衣料品には成熟した茎など薬理成分を含まない部分が用いられており、
これらの繊維を原料とする製品の製造や販売、使用はまったく問題ないものです。
植物として「麻」という名称は、本来は大麻草を指すものでした。
しかし、それとは別に日本では、
植物の茎や葉を原料とする植物繊維のいくつかを総称して
「麻」と呼ばれています。
綿花から取れる「綿(コットン)」は有名ですよね。
それ以外の植物の茎や葉からつくられた繊維素材は「麻」に分類されます。
リネン、ヘンプ、ラミー、ジェードなどの素材は「麻」に当たります。
つまり、リネンは植物のアサ(麻)から出来ているというと間違いなのですが、
繊維名としては、リネン=麻(植物繊維)となるのです。ちょっとややこしいですよね。
リネンは柔らかく肌触りがいいのですが、
麻と呼ばれることもあることから、いまだにゴワゴワして硬いイメージを持たれている方もいます。
それはヘンプやラミーも繊維としては「麻」と呼ばれてしまうからです。
ヘンプ生地は繊維分子がやや太いのが特徴。とても頑丈で硬く、耐久性のある布ですから、
ゴワゴワして固めなのですが、リネンとはまた別のものなんですね。
ではリネンはもともとなんの植物の繊維なのか、それはまたのちほど説明していきます。
元来、日本では麻繊維の代表格はヘンプだったということですが、
近年ではヘンプ素材のものはあまり見かけませんよね?
麻と聞いても、ヘンプよりもリネンの方がメジャーな気がするし……。
それってなぜなんでしょうか。
ここから少し日本の衣類の歴史から紐解いていきます。
ことが動いたのは第二次世界大戦後です。連合国軍最高司令官総司令部により、大麻が「乱用薬物」と見なされました。
そこで1948年には、大麻の栽培や所持、譲渡を禁止する「大麻取締法」が制定されます。そして国内における大麻の生産・流通が難しくなり、大麻が衣料品に使われることはこの時点でほとんどなりました。
そして1962年には「家庭用品品質表示法」が施行されます。これにより日本工業規格 (JIS) で「麻」と表記できるのは「リネン」と「ラミー」のみとなり、大麻は「指定外繊維(ヘンプ)」など素材名で表示することが義務づけられます。
つまり1962年以降から、衣類品の「麻」表記は、大麻由来のヘンプではなく、「リネン」と「ラミー」だけになったのです。
さらに2017年4月、「家庭用品品質表示法」が一部改正され、次のような表示もできるようになりました。
◉リネン
改定前=「麻」
改定後=従来の「麻」に加え、「リネン」または「亜麻」の表示も可能
◉ラミー
改定前=「麻」
改定後=従来の「麻」に加え、「ラミー」または「苧麻」の表示も可能
(なお、リネン・ラミー以外の素材は一律「植物繊維」と表示されてきましたが、この改正によって「植物繊維(〇〇〇麻)」などの表示もOK)
現在、衣類表記で「リネン」を指すものは「麻」「リネン」「亜麻」の3種類。
最後の亜麻ってなに?と思ったあなた、実はこれがリネンの正体となる植物なのです。次はリネンの正体に迫ります。
文・綿貫大介 写真・Pixabay wikipedia