生地を贅沢に使ったら、
体のラインがどこかへ消えてしまいました。
これは、かなり都合の良い「影のトリック」です。
服を着ていて「どこも締め付けられていない」という状態は、
人間を驚くほど素直に、そして上機嫌にしてくれます。
この『リネンチュニック』に袖を通した瞬間、
胸をかすめるのは「ああ、どこも苦しくない」という深い安らぎです。
ウエストの締め付けも、背中の張り感もゼロ。
身体が衣服の中で泳ぐような、圧倒的な自由がそこにあります。
しかし、ただダボッと大きいだけの服を着ると、
どうしても「のっぺり」と間延びして見えてしまうのが難しいところです。
そこで効いてくるのが、胸元に入った高めの切り替えと、
そこから落ちる繊細な「ギャザー」です。
生地を惜しみなく使い、細かく寄せて作られたこのひだが、
光を受けるたびに豊かな「陰影」を作り出します。
見る人の視線は、体型ではなく、この美しい影のグラデーションへと誘われる。
つまり、身体を力ずくで隠しているのではなく、「影の立体感」によって勝手に
姿がスマートに整って見えるわけです。
いわば、仕立屋が仕掛けた合法的な物理トリックと言えます。
生地には、「雅亜麻」を使用しています。
細く上質な糸で織られたリネンは、これだけの生地量を使いながら、驚くほど軽やか。
春や夏は風をたっぷりはらんで涼しく、
秋や冬はインナーを重ねて暖かさを抱きかかえる。
一年を通してクローゼットの最前列から退く理由が見当たりません。
そして、手元にも愛おしい工夫がひとつ。
袖口に施されたゴムシャーリングです。
家事のときや、少し抜け感を出したいときにサッと腕をたくし上げると、
ゴムが優しく止まり、袖がぽわんと愛らしい丸みを描きます。
キュッと締まった手首との対比で、
手元がふっと華奢に見えるのも嬉しい副産物です。
首元のリボンをきゅっと結んで清楚な佇まいを楽しむもよし。
少しほどいて胸元にVのラインを作り、首筋をすっきりと見せるもよし。
身体を甘やかすラクさと、ハッとするような美しさ。
そのふたつは、決して喧嘩しないということを、
このチュニックの綺麗な影が教えてくれます。
※ご注文をお受けしてからお仕立てしておりますので3週間~5週間ほどお時間をいただきます。
何卒ご理解をお願い致します。