秋の天気には、一貫性がありません。
非常に判断が難しいものです。
朝は羽織りが欲しい。
昼は、なくてもよかった気がする。
夕方になると、再び必要になる。
一日の中で季節が何度も方針を変えてきます。
そんな時期に仕立てたのが、
40番手リネンの前ボタンパーカーです。
以前はシャンブレーでおつくりしていた一着を、
今回は細かなピンチェック柄へ。
無地のように静かすぎず、
大きな柄ほど前へ出すぎない。
近づけば細かな格子が見え、
離れれば穏やかなグレーのように装いへ馴染みます。
パーカーと聞けば、
まず頭に浮かぶのはファスナーやスウェットかもしれません。
しかし、この一着の前はボタン仕様です。
フードがつくる気楽さはありながら、
正面にはシャツのような整然とした縦の線が残る。
そのため、ラフではありますが、
運動着の方向へは走っていきません。
走らなくて大丈夫です。
秋ですから、もう少しゆっくり参りましょう。
大きめのフードは、
かぶるためだけに存在しているわけではありません。
背中へおろしたときにも布の重なりが生まれ、
肩まわりと後ろ姿に立体感をつくります。
顔の近くにフードの線があることで、
首元が寂しくなりすぎず、
アクセサリーを増やさなくても上半身に表情が残ります。
そして今回、裾にはドローコードをつけました。
普段は紐をたらんと緩めて、
ストンとしたボックスシルエットのシャツジャケットとして羽織る。
で、ちょっと気分を変えたい時や、風が冷たくなってきた時は、
この裾のコードを「きゅっ」と引っ張ってみてください。
あら不思議。
裾がキュッと絞られて、全体がころんと丸い「コクーンシルエット」へ一瞬で変身します。
この丸みが本当にかわいくて、気になるお尻やお腹周りを優しく包み込みつつ、
後ろ姿までどこか愛嬌のある雰囲気に仕立ててくれるのです。
パンツに合わせる日は、少し絞って重心を上へ。
ロングワンピースへ重ねる日は、緩めて縦の流れを残す。
体を服に合わせるのではなく、
服のほうに本日の事情を聞いてもらえます。
これが、なかなか話のわかる裾なのです。
生地はリネン100%の40番手。
厚すぎず、薄すぎない肉感。
適度なハリを持ちながら、硬さだけに偏らない、
しっかり感と柔らかさの釣り合いがあります。
フードや裾の形を支えつつ、着用を重ねるほど少しずつ馴染み、
くったりとした表情へ変わっていきます。
新品のときには輪郭を楽しみ、
その後は、自分の動きに馴染んでいく過程を楽しむ。
リネンの服は、買った日を完成日にしないところが頼もしい。
コートを出すほどではない。
けれど、シャツ一枚では装いが少し終わっていない。
秋口には、そんな名前のつかない隙間があります。
この前ボタンパーカーは、その隙間を派手に埋めるのではなく、
ピンチェックの細かな表情と、変えられる裾の輪郭で、
静かに整えてくれる一着です。
留める。
開ける。
折る。
絞る。
着る人が少し手を加えるたび、服がきちんと応えてくれます。
※ご注文をお受けしてからお仕立てしておりますので3週間~5週間ほどお時間をいただきます。
何卒ご理解をお願い致します。