「パーカーでいいよ」と言ったのに、ドレスで来る人がいます。
しかも本人は、ちゃんと言いつけを守ったつもりです。
だって、フードが付いているんですから。
そういう言い分なら、こちらにも少々分がありそうです。
確かにフードは付いています。
肩もゆったりと落ちていて、身幅にもたっぷりと余裕がある。
ところが、全身を眺めてみると、
いわゆるパーカーとは、どうも雰囲気が違う。
ゆったりとしたロング丈に、自然な落ち感。
気楽な服のはずなのに、どこか品がある。
パーカーの気軽さを持ちながら、
ワンピースとしての美しさまで欲しがってしまった。
そんな欲張りな一着です。
その印象をつくっているのが、まず首元。
フードの付け根をV字に仕立てることで、
顔まわりにすっきりとした抜け感を生み出しました。
首元を詰めすぎず、かといって大きく開きすぎることもない。
視線が自然と縦に流れるので、
顔まわりをシャープに見せてくれるのもうれしいところです。
小顔に見せたい気持ちはあっても、
いかにも頑張っていますというのは、ちょっと違う。
その点、このワンピースは実にさりげないです。
顔まわりの印象を整える仕事を、何食わぬ顔でこなします。
そして、振り返ったときにもう一つの魅力が現れます。
背中の切り替えから、たっぷりと寄せられたギャザー。
前から見るとすっきりとしたデザインなのに、
後ろには豊かな生地の分量があるのです。
歩けば生地がふわりと動き、
何気ない後ろ姿にも柔らかな表情が生まれる。
後ろ姿というのは、自分ではなかなか確認できないもの。
だからこそ、そこにきちんと手をかけてある服は、なんだかうれしい。
裾の両脇にはスリットを入れました。
ロング丈に軽快さを添えるだけでなく、
重ねたパンツやスカートをちらりと覗かせる楽しみもあります。
デニムを合わせれば、ほどよくラフに。
ワイドパンツなら、ゆったりとしたシルエットを存分に楽しめます。
裾からレースを覗かせれば、今度は柔らかな女性らしさが加わる。
一枚のワンピースなのに、下に何を重ねるかで、
ずいぶん違う表情になるも楽しいポイント。
もちろん、両脇にはポケットもあります。
ここは気取らず、便利なものは便利と言っておきましょう。
そして、このたっぷりとしたシルエットを支えるのが、
25番手の中厚地リネン。
太めの糸で織られた生地には、
ふっくらとした厚みと適度なハリがあります。
それでいて、柔らかな落ち感も備えている。
着始めは少しハリや硬さを感じることがあっても、
洗い込むほどに繊維がほぐれ、
くたっとした柔らかさが増していきます。
初めは少しきちんとした顔をしていた生地が、
付き合いを重ねるうちに、だんだん打ち解けてくる。
そんな変化も、中厚地リネンの楽しみの一つです。
パーカーの気楽さ。
ワンピースの女性らしさ。
そして、着るほどに育っていくリネンの風合い。
そのどれもを、無理に選び分けなくていい。
少し遠くまで出かける日も、特別な予定のない日も。
気負わず着られて、それでいて、ちゃんと気分が上がる。
大人の普段着は、これくらいの欲張ってまいりましょう。
※ご注文をお受けしてからお仕立てしておりますので3週間~4週間ほどお時間をいただきます。
何卒ご理解をお願い致します。